三浦綾子『氷点』におけるキリスト教信仰—原罪とゆるしを中心に—
碩士 === 長榮大學 === 應用日語學系(所) === 105 === 日本は、社会の排他性が比較的高いためか、日本人のキリスト教を信仰する割合が低くなっている。そうした中で、クリスチャンの作家である三浦綾子の著作は、幅広い注目と反響を集めてきた。そして、三浦綾子の作品といえば、まずもっとも広く知られている代表作が『氷点』である。三浦綾子は、キリスト教の信仰や教義に基づいて作品を書いた。そこでクリスチャンである筆者は、本論文において、聖書を土台に『氷点』について考察した。その中で、三浦綾子の生涯や信仰の姿勢、考えについても言及した。 『氷点』は原罪を主なテーマにした作品である。本論文で...
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Format: | Others |
Published: |
2017
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Online Access: | http://ndltd.ncl.edu.tw/handle/ebaq23 |
Summary: | 碩士 === 長榮大學 === 應用日語學系(所) === 105 === 日本は、社会の排他性が比較的高いためか、日本人のキリスト教を信仰する割合が低くなっている。そうした中で、クリスチャンの作家である三浦綾子の著作は、幅広い注目と反響を集めてきた。そして、三浦綾子の作品といえば、まずもっとも広く知られている代表作が『氷点』である。三浦綾子は、キリスト教の信仰や教義に基づいて作品を書いた。そこでクリスチャンである筆者は、本論文において、聖書を土台に『氷点』について考察した。その中で、三浦綾子の生涯や信仰の姿勢、考えについても言及した。
『氷点』は原罪を主なテーマにした作品である。本論文では、『氷点』における登場人物の原罪について考察するとともに、作品の描写や展開を通し、ゆるしという問題についても考察した。なぜならば、愛とゆるしは分割しがたいものだからである。具体的には、『氷点』の主要登場人物である陽子、啓造、夏枝の心理や感情、行動などをもとに、彼ら自身に存在する原罪が、どのように表現されているかを考察した。また、『氷点』における悲劇の原因が何であるかについても見出した。また、ゆるしの過程においては、この陽子、啓造、夏枝の言動から、ゆるしをなしているかどうかについて、登場人物それぞれの自分と他人との相互関係に注目して分析した。
その結果、主要登場人物である陽子、啓造、夏枝は、原罪によって、容易に罪や不善、具体的には嫉妬や憎み、怒り、傲慢、利己心などに陥っているが、それらを自覚せず、罪に生きているということが明らかになった。また、この三者はみな他人をゆるさないという罪を犯していることがわかった。とりわけ陽子の場合からは、自分自身をゆるせないという問題があることを見出すことができた。そして、こうした罪の上に罪が重なるという状態は、神の完全な愛とゆるしを正しく認識しないことに起因しているのではないかと考えた。
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