不特定の対象を表す不定表現「疑問詞+か」の日中対照研究―村上春樹の『ノルウェイの森』に見る「なにか」について―

碩士 === 中國文化大學 === 日本語文學系 === 103 ===  筆者は中国、日本にて中国語母語話者に対し7年ほど日本語教授に携わってきたが、不特定の対象を表す「疑問詞+か」は、日本語初級教材にも多く現れ、非常に教えにくいと感じる項目の一つであり、中国語母語話者にとって、不特定の対象を表す「疑問詞+か」は疑問詞の違い、また疑問文に現れるのか平叙文に現れるのかによって理解に差があるのではないか、もしくは中国語では疑問詞を用いて不定を表すことが日本語よりもずっと少ないのではないかといった疑問を抱くようになった。  また、台湾に来てから中国版版と台湾版の文法解説書における日本語の不定表現「...

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Main Authors: Hashimoto Ayako, 橋本亞矢子
Other Authors: Chen,Shun-I
Format: Others
Published: 2015
Online Access:http://ndltd.ncl.edu.tw/handle/rr6g79
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spelling ndltd-TW-103PCCU00780062019-05-15T21:59:55Z http://ndltd.ncl.edu.tw/handle/rr6g79 不特定の対象を表す不定表現「疑問詞+か」の日中対照研究―村上春樹の『ノルウェイの森』に見る「なにか」について― 日語虛指表現「疑問詞+か」的中日對照研究―以村上春樹『挪威的森林』裡出現的「なにか」為主― Hashimoto Ayako 橋本亞矢子 碩士 中國文化大學 日本語文學系 103  筆者は中国、日本にて中国語母語話者に対し7年ほど日本語教授に携わってきたが、不特定の対象を表す「疑問詞+か」は、日本語初級教材にも多く現れ、非常に教えにくいと感じる項目の一つであり、中国語母語話者にとって、不特定の対象を表す「疑問詞+か」は疑問詞の違い、また疑問文に現れるのか平叙文に現れるのかによって理解に差があるのではないか、もしくは中国語では疑問詞を用いて不定を表すことが日本語よりもずっと少ないのではないかといった疑問を抱くようになった。  また、台湾に来てから中国版版と台湾版の文法解説書における日本語の不定表現「疑問詞+か」の翻訳に違いがあることに気づき、台湾(“台湾華語”母語話者)の日本語学習者と中国(“普通話”母語話者)の日本語学習者の間には、不定表現のとらえ方に差異があるのではという疑問も生まれた。そこで、本研究では「疑問詞+か」の中でも『みんなの日本語』において、出現率の最も高かった「なにか」と中国語の“什麽”に絞り中国語の“什麽”が不定表現として用いられる場合に、日本語と中国語(“普通話”、“台湾華語”)の間に、どのような差異があるのかについて、小学館『日中辞典』の対訳用例(“普通話”)、小説『ノルウェイの森』の対訳用例(“普通話”と“台湾華語”)をそれぞれ収集し、分析調査を行うことにした。  先行研究により、中国語にも疑問詞を用いて不特定の対象を表す表現があり、それは“虚指”と呼ばれていること、また中国語の“虚指”は日本語に比べ、指示・代用機能が日本語よりも制約を受けやすいことがわかった。  対訳分析の結果を見ると、日本語の「なにか」が翻訳される場合、林少華版(中国版)では“什麽”の省略が多いが頼明珠版(台湾版)では省略が少ないこと、また疑問文に現れる“什麽”の場合、林少華訳版では日本語の「なに」に相当する疑問の意味で対訳されたものが多かったのに対し、頼明珠訳版では日本語の「なにか」に相当する“虚指”(不定表現)として対訳されているものが多かった。よって“普通話”に比べ、“台湾華語”のほうが、“什麽”を不定表現として使用する傾向が強いことが推測できた。それ以外にも“普通話”には助数詞の出現率が高いという特徴、“台湾華語”には台湾語の影響による“有”の多用傾向が見られたことからも、日本語の不定表現「なにか」の対応には“普通話”、“台湾華語”の間に異同があることも明らかになった。 Chen,Shun-I 陳順益 2015 學位論文 ; thesis 96
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description 碩士 === 中國文化大學 === 日本語文學系 === 103 ===  筆者は中国、日本にて中国語母語話者に対し7年ほど日本語教授に携わってきたが、不特定の対象を表す「疑問詞+か」は、日本語初級教材にも多く現れ、非常に教えにくいと感じる項目の一つであり、中国語母語話者にとって、不特定の対象を表す「疑問詞+か」は疑問詞の違い、また疑問文に現れるのか平叙文に現れるのかによって理解に差があるのではないか、もしくは中国語では疑問詞を用いて不定を表すことが日本語よりもずっと少ないのではないかといった疑問を抱くようになった。  また、台湾に来てから中国版版と台湾版の文法解説書における日本語の不定表現「疑問詞+か」の翻訳に違いがあることに気づき、台湾(“台湾華語”母語話者)の日本語学習者と中国(“普通話”母語話者)の日本語学習者の間には、不定表現のとらえ方に差異があるのではという疑問も生まれた。そこで、本研究では「疑問詞+か」の中でも『みんなの日本語』において、出現率の最も高かった「なにか」と中国語の“什麽”に絞り中国語の“什麽”が不定表現として用いられる場合に、日本語と中国語(“普通話”、“台湾華語”)の間に、どのような差異があるのかについて、小学館『日中辞典』の対訳用例(“普通話”)、小説『ノルウェイの森』の対訳用例(“普通話”と“台湾華語”)をそれぞれ収集し、分析調査を行うことにした。  先行研究により、中国語にも疑問詞を用いて不特定の対象を表す表現があり、それは“虚指”と呼ばれていること、また中国語の“虚指”は日本語に比べ、指示・代用機能が日本語よりも制約を受けやすいことがわかった。  対訳分析の結果を見ると、日本語の「なにか」が翻訳される場合、林少華版(中国版)では“什麽”の省略が多いが頼明珠版(台湾版)では省略が少ないこと、また疑問文に現れる“什麽”の場合、林少華訳版では日本語の「なに」に相当する疑問の意味で対訳されたものが多かったのに対し、頼明珠訳版では日本語の「なにか」に相当する“虚指”(不定表現)として対訳されているものが多かった。よって“普通話”に比べ、“台湾華語”のほうが、“什麽”を不定表現として使用する傾向が強いことが推測できた。それ以外にも“普通話”には助数詞の出現率が高いという特徴、“台湾華語”には台湾語の影響による“有”の多用傾向が見られたことからも、日本語の不定表現「なにか」の対応には“普通話”、“台湾華語”の間に異同があることも明らかになった。
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